「自覚症状がないから大丈夫!」ではない
「糖尿病になった。内科の先生に眼科にも行けと言われた。」
「視力はちゃんと見えているから、大丈夫。」
「糖尿病は血糖値を下げればいいんでしょ?」
「仕事が忙しくて、眼科なんかに行っているヒマはない!」
糖尿病を治療中の方で、上記のようなことを思っている方はいませんか?
糖尿病の治療は内科だけでなく、眼科や歯科など他科との連携が必要です。「血糖値がおちついているから大丈夫!」と安心し、眼科受診をサボったりしないでくださいね。
なぜ、糖尿病で眼科が必要なのかは以前に書きました。
今回は、糖尿病網膜症のこわいはなしを書いていこうと思います。
重症すぎる…
先日、びっくりする患者さんが受診されました。
何と言いますか、一言で表すと「新患なのに重症すぎる」です。
なぜ、こんなになるまで放置していたのか?
自己管理がしっかりできていればどうにかできていただろうに…と思う患者さんでしたので、今後このような患者が増えないようにと願い書いていきますね。
50代 男性 働き盛り
50代、男性、バリバリのサラリーマンです。
「右眼が1年前から、左眼が2~3ヶ月前から見にくい」との主訴でいらっしゃいました。
問診の段階では「白内障かな?老眼かな?」程度の軽めの予想をしてました。
新患であり、視力低下を訴えているので視力検査から始めます。検査の場所へ移動するよう案内すると、なんということでしょう!1人では歩けません。
視力低下が著しくて、どこになにがあるかわかっていないようなのです。
私、そこまで予想はしてませんでした。
実際に視力を測定すると、両眼とも手動弁。(手動弁がどのくらい悪いのかは下記記事を参考にしてください。)
ここまで見にくいとは、予想外です!
新患でこんなに見にくいとは、ちょいとヘビーです。
糖尿病で治療中
追加で問診をとります。
- 40代の頃から糖尿病があり治療をうけている。
- 血糖のコントロールについては不明。
- 眼科には通院しておらず、今回の受診が糖尿病になってからは初めて。
- 2~3ヶ月前までは普通に見えていて、仕事も普通にできていた。
糖尿病があるとわかれば、最も疑わしい病気は「糖尿病網膜症」です。
眼圧が高すぎる
視力の次は眼圧測定をします。
右眼25㎜Hg
左眼58㎜Hg
マジ高いっす!
正常値は10~21㎜Hgといわれておりますので、余裕でアウトです。
また新たな疑わしい病気がでてきました。「急性緑内障発作」です。
急いで、眼圧を下げる必要があります。
点滴をし、眼圧を下げます。点滴後は右眼20㎜Hg、左眼39㎜Hgと少しは下がりましたがまだまだ高い状態は続いていました。
治療方針
医師の診断です。
- 両眼とも糖尿病網膜症
- 硝子体出血(目の中で出血がおき、急激かつ高度な視力低下をおこす)
- 新生血管緑内障(末期の糖尿病網膜症に合併する病気)
- 白内障
いなか町の小さな眼科ではお手上げです。
その日のうちに大きな病院へと紹介になりました。
現在、絶賛治療中と思います。
どうなるのか?視力の回復は難しいんじゃないかと思われます。治療がおちつき、また戻ってくるようであれば追記したいと思います。
「眼科は見にくくなってから受診する」では遅い
上記のようなヘビーな患者さんは治療後、0.1まで回復すればラッキーな方です。運転できるまで視力が回復となると奇跡に近いです。
働き盛りで視力を失ってしまうと、まわりが困ります。自分自身も困ります。
糖尿病の合併症は怖いです。
自覚症状がないからといって大丈夫ではありません。自己判断はダメです。しっかりと医師に眼底を診察してもらい異常がないことを確認をしてもらいましょう。
また、内科の医師の指示に従い、糖尿病の治療をしっかりとすることが大事です。
今まで不自由なく見えていた生活から、視力が奪われると、会社・家族に迷惑がかかります。
「病院が嫌い」「忙しくて時間がない」「自分は大丈夫」といろいろと患者さんは眼科に来ない言い訳をされますが、「見にくくなってから…」では遅いです。
定期的に眼科に来てくださいね!